日本において 2019 年 10 月 1 日に 8% から 10% への消費税の増税が行われます。Stripe は Stripe Billing において税率(Tax Rate)を設定する機能を提供しており、本文書では消費税増税に関連した設定確認方法、設定変更における考慮点を紹介します。経過措置として検討されている軽減税率につきましては、お客様が提供される商品、サービスにより適用可否が異なるため本文書では触れません。また、軽減税率以外の考慮点として、請求が消費税増税前、決済が増税後に行われた場合に適用されるべき税率は商品やサービスにより異なります。消費税を計上するべきタイミングは、商品やサービスの提供が行われた時が原則ですが、実際に適用されるべき税率はお客様でご確認ください。
Stripe Billing は商品に消費税を含めるかたちで、税率の機能を使わずにご利用いただくことも可能です。その場合、定期支払いに紐づけられた商品の値段を変更することはできないため、請求金額を変更するためには新しい料金の商品を用意していただき、定期支払いにそれを紐づけなおす必要があります。その他の通常の決済につきましては、税率を設定する機能は提供していませんが、消費税増税に伴いお客様のアプリケーションで必要な対応もあわせてご確認ください。
Stripe Billing の主なオブジェクトである定期支払い(接頭辞:sub_
)においては、特定のそれに含まれる商品全てに適用されるデフォルトの税率が設定できます。それとは別に、定期支払いオブジェクトに含まれる商品に個別に税率を適用することも可能です。定期支払いオブジェクトのデフォルトの税率と、特定の商品の税率、両方が設定されている場合は後者が優先されます。
Stripe Billing は税率を設定する機能を提供しています:
2019 年 4 月より前の API バージョンを利用しているユーザは、税率を tax_percent
属性で管理されていました。新しい仕組みである Tax Rate が導入されました。tax_percent
においては、定期支払いオブジェクトに税率を数値で直接設定しましたが、Tax Rate は特定の税率(例:8%、10%)を格納した Tax Rate オブジェクト(接頭辞:txr_
)が別途用意され、定期支払いオブジェクトに Tax Rate オブジェクトを紐づける形態に変更されました。tax_percent
をご利用のお客様の定期支払いオブジェクトは、Stripe が自動的に Tax Rate への移行を完了しています。tax_percent 自体は現在も定期支払いの属性の一つとして残されており、将来的には廃止を予定しています。Tax Rate により柔軟な税率の設定が可能となっておりますので、移行の手順につきましても一度内容をご確認ください。
Tax Rate オブジェクトに設定された税率(例:8%、10%)は変更することができません。8% の Tax Rate を利用しており、10% の税率に変更する場合、10% の Tax Rate オブジェクトを用意していただき、それを新たに定期支払いやインボイスに紐づける必要があります。
また、定期支払いの内容を元に発行されるインボイス(接頭辞:in_
)においても、その下書きが作成されてから確定されるまでの一時間の間に、インボイスの税率を変更することが可能です。インボイスオブジェクトの税率を変更した場合、その変更が元の定期支払いオブジェクトに反映されることはありません。インボイスにはアイテム(接頭辞:ii_
)が含まれますが、定期支払いとそれに含まれる商品、インボイスとそれに含まれるアイテムの関係性は同じです。税率の適用箇所と優先度、変更の影響範囲をまとめると以下の様になります。
定期支払いにデフォルトの税率が設定され、個別の商品には税率が設定されていない場合、全ての商品に定期支払いのデフォルトの税率が適用されます。
定期支払いにデフォルトの税率が設定されておらず、個別の商品には税率が設定されている場合、税率が設定された商品にはそれが適用され、定期支払いに含まれるそれ以外の商品には税率は適用されません。
定期支払いにデフォルトの税率、個別商品の税率、両方が設定されている場合、個別の商品の税率が適用されます。
インボイスが作成されると、定期支払いのデフォルトの税率がインボイスのデフォルトの税率、個別の商品の税率がインボイスのアイテムの税率に適用されます。
インボイスにデフォルトの税率が設定され、アイテムには税率が設定されていない場合、全てのアイテムにインボイスのデフォルトの税率が適用されます。
インボイスにデフォルトの税率が設定されておらず、アイテムには税率が設定されている場合、税率が設定されたアイテムにはそれが適用され、インボイスに含まれるそれ以外のアイテムには税率は適用されません。
インボイスにデフォルトの税率、個別アイテムの税率、両方が設定されている場合、個別のアイテムの税率が適用されます。
インボイス、またはそれに含まれるアイテムの税率を変更したとしても、その変更が定期支払いやそれに含まれる商品に反映されることはありません。
インボイスが作成されて以降、それが下書き状態の時含めて、元となる定期支払いやそれに含まれる商品の税率を変更したとしても、作成済みのインボイスやアイテムに反映されることはありません。
特定の定期支払いオブジェクトに設定された税率は、ダッシュボードの一覧のページから該当のものを開いていただきご確認いただけます。定期支払いオブジェクトの数が多いなどの理由により、一括で情報を取得される場合は List Subscriptions の API をご利用ください。
Stripe Billingが提供する税率の機能の詳細につきましては、Stripe Docsの関連するページ(英文)にまとめられています:
Stripe Billing をご利用のお客様にとって税率を効率的に変更するための方法は、定期支払いオブジェクトの多寡やインボイス発行のタイミング等により異なります。本文書では、Stripe Billingの使い方として代表的な二つのパターンにおいて、その他の Stripe の仕組みを利用して機械的に税率を変更する方法を紹介します。
例えば、2019 年 8 月 20 日に月次のプランを契約されて定期支払いを開始、以降の請求は9月20日、10 月 20 日と月の日付を維持される場合、Webhook と invoice.upcoming
イベントを組み合わせた自動化が可能です。月次の定期支払いにおいては、次回インボイス発行の一定期間前に invoice.upcoming
イベントが発行され、Webhook を設定していただくことによりお客様のサーバーでその通知を受け取ることが可能です。該当のイベントはダッシュボードにおいて、以下の様に表示されます。
example@stripe.com の次のインボイスは 7 日後に自動で支払いが行われます
次回、インボイスが発行される正確な時刻は、 invoice.upcoming
のイベントデータに含まれる data.object.next_payment_attempt
から確認できます [1]。その時刻が 2019 年10 月 1 日以降の場合に税率を変更する実装を行うことにより、先の例であれば 10 月 13 日に invoice.upcoming
イベントを契機に税率が変更され、10 月 20 日発行のインボイスは 10% の税率が適用された状況となります。
定期支払いを開始した月の日付にかかわらず、次回の請求は一律で翌月の一日に設定される場合があります。例えば 2019 年 9 月 30 日に定期支払いが開始された場合、次回 10 月 1 日のインボイス発行までの期間が短いために invoice.upcoming
イベントに依拠する仕組みでは税率の変更漏れが生じる可能性があります [2]。対応策として、インボイスの下書きが作成されてから確定されるまでの間に税率を変更する方法をご検討ください。
インボイスは当初、下書きの状態で作成され、それにあわせて invoice.created
イベントが発行されます。下書きの間はインボイスの編集が可能ですが、作成から一時間後に確定がされると、invoice.finalized
イベントが発行されて税率の変更ができなくなります。invoice.created
イベントを契機に、下書き状態のインボイスを変更することにより、税率適用の自動化が可能です。その際、発行されたインボイスオブジェクトに対する税率変更は定期支払いオブジェクトには反映されないため、その次の定期支払いに当初から正しい税率が設定されるように定期支払いの設定変更も合わせて行なってください。同様に、下書きが作成された状態で定期支払いオブジェクトの税率を変更したとしても、下書き状態のインボイスにその税率は適用されません。
[1] Stripe のシステムの時刻は UTC で管理されています。JSON でのレスポンスに含まれる時刻はunixtimeで表現されますが、日本時間の 2019 年 10 月 1 日 00:00:00は、2019 年 9 月 30 日 15:00:00 UTC、unixtime の 1569855600にあたります。
[2] 税率の適用漏れにより 10% 分の消費税が徴収できなかった場合、未徴収分の消費税を課金するには個別のインボイス発行などの方法で別途請求をしていただく必要があります。